授業では、文章表現の基本的ルール(文化庁 国語表記の基準)を示しつつ、各種ツールを活用した演習を組み込んだ。Hinako(雛形ひな子)を初期段階で導入することにより、パラグラフ・ライティングの長所と手法および論理展開についての理解を早い段階で求めた。さらに、それを前提として、文章課題を提示することによって、実際の演習を通じて語彙・表記に関する気付きを促していった。本授業の概要を図1に示す。
図1 授業内容とツール導入
文章課題は各自の興味関心に基づいて書けるよう、以下のテーマを設定した。
- エッセイ:私の大切な物(500字)
- メール:依頼文
- 説明文:任意の物事の方法(500字)
- 小論文:社会的な問題(600~800字)
- レポート:社会的な問題(3,000字)
2010年度は、初めてのツール導入であったため、それらの利用方法を学生に理解させるための時間を必要とした。
各ツールの連携手順は以下のとおり。
- パラグラフ・ライティングの考え方を導入
- 課題文章をHinako(雛形ひな子)で作成
- ComiQlipによる人的チェックを受ける
- Tomarigiによる機械チェックを受る
- 最終的にHiyodoriで公開
各ツールの利用例を図に示す。
図2 Hinako(雛形ひな子)の利用例
図3 ComiQlipの利用例
図4 Tomarigiの利用例
ComiQlipとHiyodoriは、文章の公開や友人へのコメントを躊躇する学生もいたため、学生同士の文書交換では筆名を用い、匿名性を確保した。また、コメント者には一般社会人にも協力を求めた。学生や教員以外のコメント者は、授業や成績評価に直接結びつけない一般の読者として位置づけられ、通常のコミュニケーションとしての文章表現に近づけるための役割を持つ。
文章の公開が前提とされたことと、ツールの活用を指示されたことで、学生は否応なしに文章の見直しと校正・推敲を促されることになり、文章作成時に常に読者を意識するようにできた。ただし、その活用方法は一律ではなく、学生個々のレベルや進捗に合わせたものになった。